- 【 北米】2024年の米国での鉄筋需要は878万トン(前年+5.8%)となり、今後もインフラ投資や人口増加などにより旺盛な需要が期待され、2028年には943万トンまで拡大する見込みです。2024年のカナダでの建設用鋼材需要は、145万トン(前年比+2.7%)となりました。今後も人口増加の恩恵を受け、緩やかな成長が期待できることから、2028年には198万トンになる見込みです。米国相互関税の影響について、米国拠点では、輸入材の価格下落リスクが抑えられるため、価格上昇による利益増が期待できる一方、大規模な設備投資が控えるなか、欧州から輸入するこれら設備の投資額が増加する懸念があります。カナダ拠点では、米国への鋼材輸出に一定の影響が考えられますが、カナダの報復関税により、米国からの鋼材輸入が制限されるメリットもあり、トータルでの影響は相殺されると予想しています。
- 【 ベトナム】2024年の建設需要は、前年までの不動産不況から回復し、1,020万トン(前年比+1.7%)と微増でした。2025年以降は大型公共投資等による需要喚起により北中部を中心に需要が戻り、2026年にはこれまでの水準である1,100万トン程度まで伸長すると予想しています。ベトナム拠点からは米国への鋼材輸出はないため、米国相互関税による直接的な影響はありませんが、ベトナムや中国の鋼材対米輸出が制限され、ベトナム鉄鋼市場に余剰感が出る懸念、ならびに対米輸出が多いベトナム経済全体の景気が停滞する懸念があります。
1963年に電炉メーカーとして初めて海外進出。以来20カ国以上で工場建設や技術指導、事業進出などの形で事業を行ってきました。現在は、ベトナム(3拠点)、北米(2拠点)で展開しています。特にベトナムにはドイモイ政策が開始されて間もない1994年に進出しており、ベトナム戦争後の国土復興に貢献するとともに、“日本品質” の製品として高い信頼を得ています。現地に根を下ろして事業を行うことで、現地の雇用拡大や技術力向上に貢献しています。
【 強み 】
- 50年以上に及ぶ海外事業の歴史と実績
- 成長市場(ベトナム)、成熟市場(米国、カナダ)という異なるマーケットに拠点を持つことにより、リスク分散が可能
- 現地での技術指導や設備投資を通じた当社グループの人材育成の機会が豊富
【 機会 】
- ベトナム、北米とも需要拡大見込み
- 地球規模のカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーの要請による電炉事業の地位向上
- 北米各国には当社グループが得意とする細物鉄筋の生産が可能なメーカーが少ない
【 脅威・課題 】
- ベトナムの経済成長に伴う鉄鋼需要の拡大を見込んだ同業他社の能力増強が相次ぎ、競合環境が厳しい
- カーボンニュートラルへの対応(各国政府の環境規制強化)
- 市場環境の動きが激しいことや操業面の課題などにより収益が安定しにくい
- 工場設備の老朽化対策、安全対策
当社は、2016年の米国への再々進出を契機に、日本、ベトナム、北米の世界3極体制の構築を大きな戦略としてきましたが、各国の政治経済情勢の変化に鑑み、投資戦略を北米重視に転換(ウエイトシフト)することとします。従来の世界3極体制の枠組みは変わりませんが、北米に重点を置いた戦力投入を行い、ベトナムについては北部により力点を置いた運営に努めます。
「NeXuSⅡ 2026」では、「世界3極体制」の再構築を最優先課題と認識し、すでに大型投資が一巡したベトナム事業から北米事業に投資戦略を転換することとしました。
北米事業について、ビントン・スチール社では、設備の老朽化に対応するため製鋼工場の新設および圧延工場設備の一部改造を実施し、生産性の改善による大幅なコスト削減と生産量・出荷量の拡大を図り、収益の改善と安定化を目指します。これらの設備投資には255百万ドルを計画しており、2027年の稼働を目指しています。また、アルタ・スチール社では、圧延設備の増強と10mm鉄筋の商業生産に取り組み、2024年春に商業生産を開始しました。
ベトナム事業について、VKS社は、市況の変化に合わせて安定した運営ができるよう、財務体質の改善に努め、連結決算に与える影響を極小化します。VIS社は新圧延ラインの垂直立ち上げにより、安定的に収益を上げられる会社づくりを目指すとともに、単圧ミルのKSVC社との連携を強化し、北部2社の最適生産体制を構築。ベトナム事業における中心的役割を担う会社に進化させます。
北米事業について、米国拠点は火災事故以降の操業不調が続くなか、市況が軟化したため赤字が継続しましたが、設備・操業診断のためのエンジニア派遣を実施し、コスト削減施策を実行しました。
カナダ拠点は、10mm鉄筋の商業生産などが奏功し、2024年度は大幅増益となりました。拡張した出荷ヤードが2025年5月に竣工し、今後の拡販施策は計画通り進捗中です。
ベトナム事業について、競争環境は依然厳しい状況が続きましたが、需要は回復基調にあり、2023年度を底に赤字幅は縮小傾向です。また、VIS社のハイフォン工場で2025年6月に新圧延ラインが完成。VIS社はフンエン圧延工場への輸送コストが課題でしたが、新圧延ラインの稼働により輸送費削減によるコスト競争力の確保を実現し、かつ、年間生産量が50万トン増加の80万トンとなることで、さらなる利益拡大を目指していきます。

